為替レートの正しい判断
富裕層・超富裕層ビジネスのもう1つの魅力は、個人ビジネスとして、顧客との取引を寡占化しやすい点である。
取引の大きさだけで見れば、機関投資家(生損保、投資信託、年金基金など)や事業会社などの法人の資金調達・資産運用のほうが、富裕層・超富裕層との取引よりも大きい。
しかし、最近の法人の資金調達・運用は競争が激化し、手数料の値下げで収益性が悪化している。
商品・サービスで差別化できなければ、競合他社(行)に簡単に代替されてしまいます。
法人向けビジネスと比較すると、個人を対象とする富裕層・超富裕層ビジネスは、顧客の好みやライフスタイルを理解したうえでの商品・サービスの提供が求められるため、代替が効きにくいという特徴がある。
また、金融機関に対する愛着や担当者へのなじみ、個人の資産の状況を多くの金融機関に知られたくないという個人特有の感情が占める要素も強い。
したがって、優秀なプライベートバンカーが超富裕層から信頼を得ると、他社(行)のプライベートバンカーには入り込む隙がなくなる。
このように、法人ビジネスよりも取引の排他性が強いことが、富裕層・超富裕層ビジネスの魅力となっている。
金融機関が、最近、富裕層・超富裕層ビジネスに積極的に取り組んでいるもう1つの理由は、日本の富裕層・超富裕層のマーケット規模が世界的に見ても大きいことに改めて気がついたからである。
各国の富裕層・超富裕層の市場規模を推計しているK&Mのレポートでは、主な居住用不動産を除いて、最低1OO万米ドル以上の純資産を保有する個人の数は、米国292万人に対して日本147・7万人となっている(2006年時点)。
日本は富裕層・超富裕層の数で見れば、米国に次ぐ富裕層大固なのである。
日本に進出している外資系銀行/証券のプライベートバンカーは、「日本のプライベートバンキング市場の魅力は、資産運用に目覚めていない富裕層・超富裕層が大勢いることだ」と考えている。
同じアジアでも香港やシンガポールで資産運用する超富裕層は、アグレッシブな投資を行う傾向があるという。
また、欧州の超富裕層は、何代にもわたって資産を受け継いできたため、「資産保全のためにコストをかける」という意識を明確に持ち、資産保全の経験やノウハウを蓄積してきた。
日本の場合、戦後の高度成長期を経て資産を蓄積してきた富裕層・超富裕層が多く、資産家として何代にもわたって資産の管理・承継に成熟しているファミリーは、欧州ほどには多くない。
また、香港やシンガポールのような投資や相続に関する税制優遇がないため、PBサービスが十分に発展してこなかった。
ゆえに、今後のPBサービスの拡大余地が大きいと外資系金融機関は見ているのである。
富裕層・超富裕層ビジネスには、それ自体のビジネスとしての魅力に加えて、準富裕層以下のリテール金融全体への波及効果が見込める。
一般的な傾向として、人は自分よりお金持ちの生活や消費スタイルにあこがれるものである。
また、地方に住む人は都市部に住む人の生活が気になるという傾向がある。
S氏『ニュー ・リッチの世界』(K社、2006年)によれば、日本のお金持ちは世界の大富豪の生活や消費スタイルを真似ようとする傾向がある。
資産階層や住んでいる地域による序列意識が存在し、生活や消費スタイルの伝播が行われているのである。
金融サービスにおいても同様の傾向がある。
以前は、機関投資家や超富裕層に限定の金融商品であったヘッジファンドやプライベートエクイティファンドが、ファンド・オブ・ファンズようになった。
また、超富裕層向けに個別に資産の配分を管理・アドバイスするポートフォリオ・サービスが、SMA(セパレートリー・マネージド・アカウント)という形で富裕層に提供されるようになった。
さらに、投資先を投信に限定するファンドラップとして、準富裕層からアッパーマス層に普及しはじめている。
SMAの最低契約金額は1億円以上、ファンドラップの最低契約金額は1000万円以上であることが多い(金融機関によって、最低契約金額は異なる)。
富裕層・超富裕層ごとにカスタマイズして提供してきた金融サービスを準富裕層以下に「規格化」して展開する理由は、お金持ちに対するあこがれや消費スタイルへの追随という側面だけではない。
機関投資家や富裕層・超富裕層という少人数のマーケットにおいて市場の流動性や安定性を確保し、リスクの低減などの利用者保護の体制ができてから、準富裕層以下のボリュームゾーンに展開するという意味もある。
富裕層・超富裕層ビジネスにおいて高いステータスとブランド力を確立した金融機関が、準富裕層からアッパーマス層向けビジネスにおいても有利なポジションを得ることができる。
金融機関は、富裕層・超富裕層ビジネスに、そのビジネス単体の採算だけでなく、リテール金融全体への波及効果も見据えて取り組むべきだろう。
だからといって、すべてのリテール金融サービスが富裕層・超富裕層向けサービスから生まれるわけではない。
たとえば、小口の株取引をセルフで行うネット証券取引、消費者向けのキャッシングや無担保ローン、スイカやエディに代表される電子マネー、CVSを利用した決済専門銀行は、最初からマス層向けに開発され、発展してきた。
これらは、情報技術(IT)、与信管理技術、個人認証やセキュリティ管理技術などのテクノロジーの進歩によって実現したビジネスである。
また、異業種・異端児的な発想から生まれた新しいリテール金融ビジネスという。
リテール金融には、マス層向けの斬新なリテール金融ビジネスモデルを生み出す潮流と、富裕層・超富裕層向け金融サービスを、準富裕層からアッパーマス層に展開するという二つの潮流がある。
以上をまとめると、次のようになる。
富裕層・超富裕層マーケットは、金融資産の大きさ、職業、居住する地域、世代などによって多様なニーズがあり、それを便りにして戦略をつくることができないという難しさがある。
さらに、富裕層・超富裕層の相続・事業承継による子ども世代への交代、団塊世代や起業家などの都市部での新世代富裕層の台頭、業態別の業務分野規制の緩和や海外金融機関の日本進出による競争の激化・競争の中身の変化などによって、マーケットの変化スピードが速い。
このような難しさはあるが、日本の富裕層・超富裕層マーケットは、米国に次ぐ規模があり、富裕層・超富裕層が資産運用において活性化していない点をビジネスチャンスと捉えれば、膨大な潜在マーケットが残っている。
さらに、富裕層・超富裕層ビジネスへの取組みは、リテール金融全体におけるノウハウとブランドの構築につながる。
これが、金融機関が富裕層・超富裕層ビジネスに取り組む意味である。
本章は、富裕層・超富裕層ファミリーの地域分布について論じる。
これは、金融機関の拠点や人員などのリソース配置を決める要素となる。
また、富裕層・超富裕層個人の居住地に加えて、そのファミリー(とくに子ども)との同居状況や海外生活経験にも焦点を当てる。
これは、富裕層・超富裕層個人を「点」として捉えてアプローチするのではなく、ファミリーという「面」で捉えてアプローチすべきであるという考えからきている。
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為替レートについての文章を他人に見せたがらないことで、批判されなければ為替レートの文章力は伸びないと思います。
